<意見> 駐車装置は、実際の日常生活において、幼児を連れて多くの荷物を車で運んでいるなど、利用者に様々な状況で使用されている。しかし、現在稼動している駐車装置は、装置内に運転者以外の者が立ち入らないことを前提に設計されている。このような設計は、日常生活空間における実際の利用環境や人の行動特性を十分に考慮したとはいい難いものであり、その結果として、駐車装置の利用には、多くの重大なリスクが伴うこととなっている。駐車装置の安全確保に関しては、駐車装置のリスクを最もよく知る製造者が、装置自体のリスク低減を図るとともに、利用者等に対してリスクや使用方法について周知する等、主体的な役割を果たすべきである。 他方で、事故の発生を防止するためには、実際に駐車装置を操作する利用者自らもリスクを認識し利用することが重要である。 上記を踏まえ、国土交通省及び消費者庁は、機械式立体駐車場の安全性を高めるための施策を進めるに当たり、特に次の点について取り組むべきである。
1.国土交通大臣への意見 (1)制度面等の見直し ①現在、国土交通省において検討が進められている、安全性審査に係る駐車場法施行令(昭和32年政令第340号)第15条の規定による大臣認定制度(以下「大臣認定制度」という。)の見直しに当たっては、過去に大臣認定又は公益社団法人立体駐車場工業会(以下「工業会」という。)の認定を受けた型式の駐車装置であっても、新たに設置する場合には、改正後の大臣認定制度における安全基準に基づき、必要な設計変更等を行った上で、改めて認定を受けることとするなど、利用者の安全に十分に配慮した制度とすること。 ②工業会に対して、「機械式駐車場技術基準」(工業会発行)(以下「技術基準」という。)の全面的な見直しを行う際、実際の利用環境や人の行動特性も考慮したリスクの分析、評価など十分なリスクアセスメントを行い、平成26年度中に改定するよう促すこと。また、製造者に対しても、上記技術基準の見直しに併せて、各社の設計基準の整備、見直しを促すこと。 ③駐車装置の安全性に関する基準について、国際的な機械安全4)の考え方に基づき質的向上を図り、業界全体に適用させるため、JIS規格化について早急に検討を進めること。 ④駐車場法(昭和32年法律第106号)は、駐車面積が500㎡以上の一般公共の用に供する駐車場のみに政令で定める技術的基準への適合を求めているため、マンション居住者用の駐車場等に設置されている駐車装置には適用されない。これらの駐車装置についても、その安全性を確保するた めの法的な整備の検討を早急に進めること。 ⑤製造者から利用者への安全に関する情報提供を確実にするための仕組みの検討を早急に行うこと。 上記③、④及び⑤については、平成26年度中に検討結果を明らかにすること。 (2)既存の設備への対応 工業会によるリスクアセスメントの結果判明した、重大な事故につながる高いリスクについては、本調査報告書にある再発防止策等を参考に、目標年限を区切る等して既存駐車装置の改善を促進するための施策を講ずること。 また、後述の2.(1)に記載のある関係者間の連携による安全対策の検討・実施を促すこと。
(3)事故情報収集及び公開の仕組みの構築 駐車装置で発生した事故情報の継続的な収集・分析を行い、その結果を適切に公開するとともに、「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」(平成26年3月、国土交通省)(以下「安全対策ガイドライン」という。)及び技術基準の見直し、製造者への情報のフィードバックを行うなど、事故 の再発防止及び駐車装置の安全性の向上を図るための仕組みを構築すること。 2.国土交通大臣及び消費者庁長官への意見 (1)安全対策の検討・実施の推進 駐車装置は一度事故が起きれば重大な被害の発生につながること及び長期にわたって使用されることを踏まえ、目標年限を区切る等して、製造者、保守点検事業者、所有者・管理者(マンション管理組合を含む。)、利用者に対して、協議の場を設置し、連携した安全対策の検討・実施を促すこと。 (2)安全利用の推進製造者、設置者及び所有者・管理者に対して、駐車装置の安全な使用方法、緊急時の具体的な対処方法等について、利用者に向けた説明の徹底を促すこと。また、製造者及び保守点検事業者等に対して、所有者・管理者と協力して利用者に向けた教育訓練の実施を促すとともに、利用者に対して参加を促すこと。 (3)注意喚起の実施 具体的な事故事例等を基にするなど、駐車装置が有する危険性及び駐車装置を利用するに当たっての注意点を取りまとめ、利用者に対して継続的な注意喚起を実施すること。
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