産業界の安全のうち
- 安全工学(機械安全、電気設安全、制御による安全)
- 作業現場の安全(労働安全コンサルタントの業務)
- ヒューマンファクター(ヒューマンエラー)
に関わるコンサルテーション、指導を主要な業務としています。
安全に関わる業務を多数おこなっているうちに事故原因調査、さらにその原因の鑑定を依頼されるようになり、最近では弁護士からの依頼で裁判に関わる業務も増えてきました。
ヒューマンファクターズ
大きな事故が起きる度に「あってはならない初歩的なミス」と報道されます。事故・労働災害は機械と作業環境そして人間特性が適合していないときに発生します。人間が存在するところでは必ずヒューマンファクターを考慮しなければなりません。現場で生じる労働災害には複数のヒューマンファクターが関連します。ヒューマンファクターを考えるとは人間そのものを考えることとも言えるでしょう。ヒューマンエラーはヒューマンファクターの要素の一つです。ヒューマンエラーには多くの定義がありますが、現場的には
「するべき事が決まっているときに、するべき事をしなかった、あるいはするべきでない事をした」 とするとヒューマンエラーが急に身近なものになり分かり易くなります。
ヒューマンエラーの防止
人間ですから間違えます。人間ですから忘れます。人間ですから集中が続きません。人間が適度な緊張で作業に集中するときにはあまりエラーは起きませんが、順調に作業を続けながらふと別のことを、たとえば次の作業の段取り、が頭に浮かんだりします。これは人間という素晴らしい創造物の利点であり欠点でもあります。機械はあらかじめ設計されたとおり、プログラムされたとおりに長時間にわたって働いてくれますが機械は機械です。人間の柔軟性とは比較になりません。人間は万能機なのです。自動機械は単能機械です。ヒューマンエラーの発生のメカニズムを知ればヒューマンエラー対策が浮かんできます。災害を無くす(低減する)ためには、まずハード的対策(機械の安全、電気の安全、設備・施設の安全、人間工学的な対応、およびフールプルーフ)をおこなってから、ソフト的対策に取り組みます。
リスクアセスメント
人が何かを積極的におこなおうとする時には必ずリスクが生じます。このリスクを組織的に取り組み危険源、損失などを低減するあるいは回避するプロセスの事をリスクマネジメントといいます。 企業活動において必ずリスクがあります。
企業では
ことがとても大事です。大まかにリスク分析をおこない、リスクアセスメントによりリスクを管理するパフォーマンスを測定し改善しリスクの顕在化に備えることをおこないます。
安全工学と労働災害の分野では、設備、機械や作業に伴うリスクに特化してリスクアセスメントをおこないます。具体的にはリスク(危害のひどさと危害の発生の可能性の組合せ)の大きさを評価し、そのリスクが許容出来るかどうかを判定するプロセスのことです。評価に続きリスクの低減方策を検討しその低減方策が新たな危険源にならないか、実施可能な低減方策かなどを十分検討してリスクの低減をはかります。リスクアセスメントはリスクマネジメントの中の中核部分ですが、いまや独立して実施されることも多くなっている。リスクアセスメントの実施にあたっては、危険源を見落とさないこと、危険源の発生確率を恣意的に操作しないこと、リスクの大きさの討議に当たっては参加者が納得出来るまで討議することなどの注意事項があります。
国際安全規格
リスクとは何か、安全な機械にするために製造者(設計者)は何をするべきかなどをグルーバルスタンダードISO12100機械類の安全性-基本概念,設計のための一般原則は明確に述べています。この国際安全の基本規格は、機械の設計と製造に携わる人達の教科書といえるものです。平易に記述してある規格の文章には実に多くの思想、提案、示唆が含まれていますので、安全工学の専門家による支援が有益です。なお、このグルーバルスタンダードは2010年に改訂されISO12100-1:2003,ISO12100-2:2003, ISO14121:2007の3つの規格が統合されてISO12100:2010となりました。講義名称の一覧を次表に示します。
1 |
労働災害はなぜ起きる |
|
・ガードの選択 |
2 |
国際規格 |
10 |
・ガードへの要求事項と設計 |
3 |
用語の解説 |
11 |
・インタロックの形式 |
4 |
機械の設計時に考慮すべき危険源 |
12 |
・インタロックの技術 |
5 |
機械の設計時に考慮すべき危険源 |
13 |
・インタロックへの要求事項と設計 |
6 |
本質的安全設計方策 |
14 |
・非常停止装置 |
7 |
安全防護と付加の保護方策 |
15 |
・避難と脱出 |
8 |
・ガードの種類 |
16 |
使用上の情報 |
9 |
・安全距離 |
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安全原則と十分に吟味された安全原則 |
機械安全
職場で使用する機械で労働災害が発生することは、機械の設計者・製造者にとって深刻な問題です。機械を使用している事業者にも大きな問題です。安全に関する国際規格群は多くの基準を提供してくれています。これらを実際の設計に適用することには安全に関する知見、規格相互の関連性の知識、現場の経験が必要です。機械のリスク低減の講義名称の一覧を次表に示します。
1 |
安全戦略 |
8 |
作業者位置を固定による保護 |
2 |
偶発的危険状態に対する設計方策 |
9 |
人体存在検知式保護装置 |
3 |
確定的危険状態に対する設計方策 |
10 |
安全標識 |
4 |
本質的な安全設計方策 |
11 |
回転機械部品の保護 |
5 |
本質的な安全設計方策 |
12 |
落下の危険源に対する設計方策 |
6 |
インタロック装置と施錠装置 |
13 |
非常停止装置 |
7 |
安全機能付安全スイッチ |
14 |
動力源断路装置 |
電気安全と制御に依る安全
機械の動力のほとんどは電力です。機械の安全の多くは制御によって保たれています。電気設備・制御装置は機械設備においてとても重要なものですが、安全なものであるかを証明することは容易ではありません。そこで国際規格は電気装置と制御装置の安全関連部の詳細な要求仕様を規格化し、その規格を満足しているかを認証し安心して使用できる電気装置と制御装置であることとしてよいとします。これが認証制度です。国内で製造される機械の認証は主に欧州の認証機関の日本支社がおこなっているようです。
主な国際規格は
- IEC60204-1:2005 (JIS B9960-1:2008) 機械類の安全性−機械の電気装置−第1部
- ISO13849-1:2006 Safety of machinery-Safety related parts of control systems- Part 1
- ISO13849-2:2003 Safety of machinery-Safety related parts of control systems- Part 2、Validation
- JIS B9705-1:2000 (ISO13849-1:1999) 機械類の安全性、−制御システムの安全関連部−第1部
これらの国際規格(JIS規格)が定めている電装盤と制御装置の安全関連部への要求事項は国内で一般的に製作されている各種の盤とかなりの相違があります。電気・制御盤の多くは発注者である機械メーカーから大まかな要求仕様が盤メーカー(その多くは小規模経営)に渡され、詳細設計を含む製作の多くを盤メーカーに依存しているのが現実です。JIS規格B9960-1が発行されて10年余が経過しました。世界が要求する電気と制御の安全を理解し世界に通用する電気設備、制御装置、安全関連部となって頂きたいものです。当社の代表者である森山哲が執筆した国際安全規格利用の手引き電気・制御安全編(日本機械工業連合会、日本食品機械工業会、2007)はIEC60204-1:2005とISO13849-1:2006を解説した日本で最初の調査研究報告書でしょう。
安全衛生診断
事業場の安全衛生診断は多項目に及びますがその代表的な診断事項は次の表に示されるものです。
診断事項 |
項目(例) |
基本的事項 |
安全衛生方針
安全衛生管理計画
安全衛生管理規定
統計業務
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安全衛生管理体制 |
法定要求選任事項
安全衛生管理体制の整備
安全衛生委員会の活動
作業主任者等の選任
職場巡視(パトロール)の内容と実施状況
安全管理者の職務
衛生管理者の職務
産業医
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安全衛生点検体制 |
安全点検のしくみ
安全点検の実施状況
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機械設備の安全化 |
災害報告書の整備状況
法定要求事項の遵守状況
安全カバー(ガード)の設置状況
インタロック回路の設置状況と無効化対策
安全装置のフェールセーフ化
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作業手順書 |
整備状況
更新の状況
教育訓練
非定常作業対応
|
安全衛生教育 |
法定要求事項 |
リスクアセスメント |
危険源は拾われているか
リスクの大きさの評価
妥当性の確認をしているか
低減策は実施されているか
文書化されているか
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外国人労働者 |
労働条件、契約条件
安全衛生の確保
労災発生時の対応措置
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派遣労働者 |
下請け事業場 |
安全衛生活動 |
安全衛生パトロール
ヒヤリハット報告制度の導入推進
指差し呼称推進
KYTの導入実施BMの導入推進S運動の導入推進
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事業場特有の事項 |
状況により判断 |
安全衛生の指導
「労働安全コンサルタント」・「労働衛生コンサルタント」は、その名称のもとに、事業者の求めに応じて、報酬を得て、安全診断・衛生診断やその指導をおこないます(労働安全衛生法第81条)。 次のような時にコンサルタントの活用をお奨めします。
- 労働災害が発生したとき
- ヒューマンエラーを防止したいとき
- 安全衛生管理特別指導事業場の指定を受けたとき
- リスクアセスメントを行いたいとき
- マネジメントシステムを構築する時
- 計画の届出をするとき
- 機械整備・作業環境等の改善を行うとき
- 工場新設や新技術を導入したときのリスクを低減したいとき
- 安全衛生管理活動を活性化したいとき
- 安全衛生教育の講師の選定に困っているとき、例えば
特別教育 低圧電気取扱の教育
新入社員への安全衛生教育
- 安全衛生管理規定等の作成で困っているとき
- その他安全衛生上の問題で相談相手がなく困って いるとき
事故調査
事故原因の技術的調査をおこないます。労災事故の場合には純粋に技術的なことだけではなく、関連する法令の問題や事業場や組織の問題、さらにはヒューマンファクターなど属人的な問題があります。そのようなこともご相談いただけます。ご依頼内容により複数人でおこなう場合があります。また事故調査のご依頼内容によっては他の専門家をご紹介することがあります。
鑑定
鑑定とは専門性の高い分野について、第三者の高度な学識・経験を有する専門家が、依頼によって報酬を受け、中立的な立場で、依頼者や当事者にも分かるように明確化することであり、鑑定結果は、紛争の解決や公正な事実の評価等に用いられます(技術コンサルティングハンドブック、p90、オーム社)。 鑑定を依頼される場合は
メール info@safetyeng.co.jpでお問い合わせ下さい。ご依頼内容により複数の鑑定人でおこなう場合があります。また鑑定のご依頼内容によっては他の専門家をご紹介することがあります。なお、森山哲は公益社団法人 日本技術士会 登録 科学技術鑑定センター (
http://www.kantei-center.com/)の会員です。
技術相談
技術の話と思っていても、実際はヒューマンファクターの問題であったり、安全衛生の問題であったりする場合があります。また、技術の分野は広いので他の分野の専門家を加えると思いがけず問題、課題が浮き彫りになることがあります。業務上の問題にぶつかったら、まず技術士に、または労働安全コンサルタントに相談することをお奨めします。
教育、講演
産業現場に於ける
などをお引き受けしています。
低圧電気特別教育(法定事項)
特別教育、特に低圧電気取扱の教育を実施したいという企業が急激に増えています。そうした企業からのご要望にお応え出来るよう当社は教育を希望される企業(事業所)が用意される研修会場に講師が出張し学科教育と実技教育を行います。
低圧電気特別教育は、学科(7時間)と実技(1時間以上(開閉器の操作の業務のみを行なう者について)、または7時間以上(低圧の活線作業及び活線近接作業の方法について))行います。実技教育は教育用機器材(分電盤、工具、安全備品、保護具など)を使用して行います。下表は学科教育と1時間の実技教育(低圧の充電路の敷設若しくは修理の業務または配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路のうち充電部が露出している開閉器の操作)の例です。
当社では、法定の教育課程の内容である基礎知識に加えて技術者として理解しておくことが望まれる より高度な電気安全の技術者教育を提供していますので受講した電気技術者のみならず多くの分野の技術者から電気のことがよく分かったと好評です。
(頂いたご意見の一部)。
低圧電気実施の案内(pdf77kb)