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技術士は文部科学省登録の中立で高等な技術者です。
労働安全コンサルタントは安心して働ける職場にするための
労働安全衛生法の規定による労働安全の専門家です。
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安全とは

1.はじめに

「災」は自然が引き起こす悪い出来事が語源である。人間は原始以来多くの危険にさらされてきた。飢え、寒さ、嵐、洪水、地震、雷、猛獣、そして病気である。人間はこうした自然災害を知恵で克服し、人間を自然災害から守ってきた知恵が科学・技術となった。共同生活を営むようになった社会では、悪い出来事を引き起こすのは自然より人間そのもの、あるいは人工物が主な原因となっている。
2011年は「安全」と「安心」について多くの事を考え直す時になった。3・11東日本大震災、巨大津波そして原子力災害である。自然の圧倒的な力の前には科学技術は微々たるものであることを思い知らされた。人間は台風の進路を予想できても発生を防いだり進路を変えたりすることは出来ない。地震の発生を予測することは緒に就いたばかりである。そして巨大津波の前に人間は高台に避難することしか出来ない。巨大津波を被った福島第一原発は崩壊し原発の安全神話(根拠もなく絶対的なものだと信じ込まれ、多くの人々の考え方や行動を拘束してきた事柄)であって造り上げられた仮想、は一瞬にして崩れた。
本サイトでは、安全安心社会に役立つ機械類を、設計、使用そして廃棄にいたる全ライフサイクルにおいて、安心して使用できる機械類への工学(安全工学)の役割、機械の使用者の人的要因(ヒューマンファクター)そして職場(workplace)で働く人達の安全と産業衛生についての安全安心を考えたい。
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2.安全という用語

安全を定義することは大変難しい。そこで国際規格(ISO/IEC Guide 51)は、安全(safety)を受け入れられないリスク(risk)からの開放(freedom)と定義している。リスクはゼロにならないために残留リスクを認め、残留リスクの大きさは状況や人間によってちがって良い。
受け入れられるリスク :ほとんどの人が受け入れる。
受容できないリスク :ほとんどの人が受け入れない。
許容可能なリスク :"その時代の価値観に基づく、所与の状況下で受け入れられるリスク"であり、その時代の技術水準や社会の価値観、法律上の問題など様々な要素によって決められるものであり、その決定は人の判断による。
ISO/IEC Guide 51:1999条項3.1 safety
freedom from unacceptable risk.
JIS規格(JIS Z8051:2004)条項3.1 安全(safety)
受容出来ないリスクがないこと。
JISの訳は否定形を2度(2重否定)使用するという技術文にはふさわしくない文章であり、またfreedomを単純な否定としているところにも無理があるのでここでは、
本サイトの安全の定義 受容出来ないリスクの心配から開放されていること
としたい。
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3.リスク

危険源とは危害を引き起こす潜在的根源をいう。
リスクとは「危害(harm)の発生確率と危害のひどさの組み合わせ(combination)」と国際規格は定義している。リスクの由来はラテン語(Risicare)といわれ、イタリア語の「断崖に挟まれた狭隘な水路を何とか操船して抜ける」から来ているという。リスクは、単なる受動的な危険ではなく、行為者自身が自ら危険を認知しつつ敢えてその危険に挑むというような意味での危険(村上陽一郎、2005、安全と安心の科学)であることに注目して貰いたい。
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4.ALARP「合理的に実現可能な程度に低い」

労働安全衛生法が平成18年3月に改定され、リスクアセスメント(危険性または有害性等の調査、安衛法第28条の2第1項)の実施が努力義務(努めなければならない)であるが今や必須のものとして扱われている。 これに基づく「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」「同解説」では合理的に実現可能な限り、より高い優先順位のリスク低減措置を実施することにより、「合理的に実現可能な程度に低い」(ALARP)レベルにまで適切にリスクを低減するという考え方を規定したものであることとしている(同指針10(2))。ALARPの原理図をIEC61508-5:1995より引用して下図に示す。 なおリスク低減をどこまでおこなうべきかは、
  • 運転条件
  • 使用環境条件
  • 基本的安全原則
  • 十分吟味された安全原則
  • 十分に吟味された安全コンポーネント
などを考慮して最新の技術(state of the art)を最大限に活用し優良な工学な方法(good engineering practice)で行う事が肝要でありコストがかかるから、今まで事故が起きていないからといって安易に妥協してはならない。

最新の技術を最大限に活用して(state of the art)CostとBenefitsの
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5.機械による事故はなぜ起きるか

人が機械を使用して生産活動に従事する産業の現場では、押しつぶされ、はさまれに代表される災害が起こりやすい。軽微な災害も相変わらず発生している。労災保険の新規申請者数は毎年50万件〜60万件と膨大な数である。即ち、大雑把にいうと100人に一人が労働災害の被害者となっている。危険源が周囲にある職場では災害に遭遇する恐れはもっと高いことは容易に想像出来る。生命、身体や健康に「安全で安心な」職場環境を造り上げるためには、まず安全で信頼性の高い機械設備と安全な作業環境を造り上げることを目的とした計画・設計を行う必要がある。そのために、技術に基づいた安全理論を正しく理解し、機械設備をはじめ作業環境の安全を確保することが重要である。
 これまで、機械設備は、高い生産性と性能を有し経済的で故障やトラブルが発生しない信頼性の高い構造であることを主眼として設計・製作されてきた。人間に危害を及ぼすように安全設計をしてきた。稼働中に故障やトラブルが発生しないように確実なメインテナンスを実施して、機械設備が安定した生産を確保するように、人間の教育・訓練を行って、注意力と保全性を高いレベルに維持するよう努めてきた。しかし、現実には、現在の高度化され複雑な機械設備では、故障をゼロにはできないし、ミスをしない人間もあり得ない。そこでいかなる事態が発生しても少なくとも「人間には危害を加えないシステム」を作る必要が強く求められるようになった。
 「安全」は安全を確認できたときのみが安全であり、それかできないときは危険と見なすとする「安全確認型システム」を提案され実地に活用されている。従来の信頼性だけでなく、安全性の条件を加えて、効率の良い操業と安全な作業を保証する。すなわち、両者の積(図1に示すような論理積)をとったシステムを構築することが目的である。換言すると、機械は滅多に止まらないという意味で高い信頼性を持っているが、もしも機械に故障が起きても、作業者の誤り動作があっても、必ず安全が確保できるようなシステムを求めている。
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6.自動機械における労働災害

機械設備の自動化の目的には、高速化、正確化、省人化に加えて、人には適切でない危険作業や重負荷労働、暑熱・寒冷作業等を機械設備が人に代わって処理して、人々に安全で快適な作業環境の提供が含まれている。このことが労働災害事故の減少に大いに寄与している。自動化された機械設備は、加工中にワークピース(加工物)のちょっとした不具合や材料や加工物の詰まりなどの些細なトラブルが発生することは珍しくない。機械設備にトラブルや故障が発生した時に、専門家(自社、社外)へのトラブルや故障に対処するための仕組みあるいは機能が必要であるが、一般的に不十分といえる。また多くの機械設備は大量生産向きに出来ており、機械の停止を嫌う傾向が工場で働く人たちの間にある。そのために、作業者が運転中の機械設備のトラブル処理を行おうとして被災することが多く発生している。自動化した設備で発生した災害の災害要因には下記のようなものがある。
  1. 操作機構が複雑なため、誤って機械の作動を開始させて作業者が被災した。
  2. 自動機械の作業中にトラブルを発見した作業者が、とっさに処理しようとして作動中の機械の危険部に身体を入れて被災した。
  3. 自動機械が作動(走行)しているのに気付かず、無防備な体勢で作業者が自動生産ラインに入った時に、作動中の機械に死角から襲われて被災した。
  4. 自動機械が条件待ち停止(ホールド状態)中、作業者が完全停止状態と勘違いし危険領域に入り機械が不意に作動して被災した。
  5. 自動機械の制御装置が故障のため異常作動が生じ、停止中の機械が不意に作動を開始した、あるいは停止すべき機械が停止しなかったため被災した。
  6. 安全装置が故障して機械を停止できなかったため被災した。
  7. 関連機器と主要機器間で連結を行うためのインタロックがうまくとられていなかったため、不意に装置が作動し被災した。
平成21年に発生した製造業の死傷者数(休業4日以上)では、全災害105,718人のうち、製造業業は23,046人、21.8%、建設業21,465人、20.3%である。うち運転操作・材料加工物供給/取り出し・加工組立分解作業が86%と多いが、自動化の進んでいる環境では、品種変更等に伴う治工具取り替え・切り粉など除去・段取り調整作業中の災害発生がほとんどである。また保全作業中の災害発生率は9.4%と高率である。このように定常作業での災害よりも異常発生時や、設備と加工物にトラブル発生時、いわゆる非定常作業における災害の方が高率となっている。また、これらの災害発生時における作業者が誤りを起こす要因は、「判断ミス」が51%と圧倒的に多く、次に「認知・確認ミス(聞く、見る、読む)」が25%、「動作ミス」が22%となっている。これらのミスの結果として起こる事故は「はさまれ・巻き込まれ」29%、「転倒」15%、「切れ・こすれ」11.2%、「飛来・落下」8.8%、「動作の反動・無理な動作」8.0%、「激突され」4.5%、「激突」4.1%、であった。また、防護・安全装置を無効にするが309件0.8%、安全装置の不履行2.1%、運転中の機械・装置などの掃除、注油、修理、点検など12.5%が報告されている(平成19年)。このような状況のもとで機械設備の信頼性と、人間の安全感覚のみに依存するだけの安全管理の考え方では、安全を確保することはもはや期待すべきではない。

事業場には、作業者が不用意に立ち入ると危険な場所(機械的エネルギを発生するような範囲)を安全柵(固定式の隔離ガード)で囲い、入り口に扉(可動式ガード)を設け、この開閉には安全スイッチ等を備える、あるいは、光線式センサ等で人間が意識して停止操作しなくても、機械設備が自動停止できる安全装置(インタロック装置)を備えている例も増えてきている。しかし、安全柵の内側に機械が設置されているのはまだ少数で、多くは安全スイッチや光線式センサの役目を作業者自身に依存している、すなわち、緊急時に人が非常停止ボタンを操作して、ぎりぎりの事故回避が実行されているのである。非常停止ボタンは、決して安全装置ではなく、安全装置がないところで、やむを得ず危険回避を人間に委ねている装置であることを認識すべきである。機械とそれを扱って作業を行う作業者との関係を、人間−機械系として考えると、一般に機械による災害は、機械の運転によって出力されるエネルギ(機械的な可動部の作動、電気的エネルギ、高圧水・レ-ザ光等の放出)が人間に到達することによって発生することになる。

機械の運転によって出力されるエネルギは、プレスのスライドの空間のように機械の作業領域に出力される。また、この空間は、プレス作業における加工物の送給・取出しや起動操作等の作業を行うための人間の作業領域でもある。すなわち、この両者の空間が重なりを持つ場合には、一般に上図に示すようなモデルで表すことができる。上図で、機械の作動領域と人間の作業領域の重なった空間を危険領域と呼ぶことにする。この図を見ればわかるように、人間が機械を使用して行う作業においては、「人間と機械の運転出力が同一空間内に同時に存在する場合に、機械の可動部等に人間が接触し、人間が災害を受ける」ことになる。この条件が機械災害の発生メカニズムということになる。そこで、機械災害の防止の基本は、上に述べた災害の発生のメカニズムの条件が成立しないようにすることになる。すなわち、人間と機械の運転出力とを空間的に分離する方法(隔離安全:人間の作業領域と機械の作業領域を完全に隔離し、危険領域を持たない方法)、あるいは、時間的に分離する方法(停止安全:人間が作業を行うときは機械が停止する方法)をとることが、機械災害の防止の条件であり、言い換えると、人間と機械の運転出力との空間的分離または時間的分離が安全確保の基本だと言える。
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7.人間的要因と安全

事故防止にはハード的な対策とソフト的な対策があると言われる。すなわち広義の機械類の安全(safety of machinery)と人間の行動(human behavior)の双方が揃ってはじめて安全を維持出来ると考える。事故に遭いやすい人は、
  • ヒューマンエラーを起こしやすいひと
  • 違反行為をしやすいひと
  • 知識と技能が身についていないひと
  • 危険性について知らないひと
などと言われるが、人間の諸特性について危険性の評価する方法がない、あっても通常の産業界で活用出来るほど一般化されていないので本サイトではヒューマンファクターのページで論じたい。
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8.職場における安全とは

企業活動を継続するためには、良いサービスや製品を提供し、それを購入してくれる顧客があり、そしてサービスや製品を作り出すことが必要である。生産活動においてはそれに従事する作業者の安全が担保されていることが最低限必要な条件である。人間が傷つくことの防止に熱中するあまり企業の生産活動はどうなっても良いのかという議論が時として起こる。その議論については職場における安全とは
  • 人が傷つくような事故もなく
  • 材料・設備や製品も損害・損傷を受けていないし
  • また将来においてもそのおそれのない状態にまでよく管理されていること
という状態であると広くとらえて貰っても良いとご返事させて頂きたい。
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