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安全工学

安全工学

 電気安全の概要

電気安全の概要

1 電気災害の種類

 電気は現代文明を支えている最も基本的なエネルギーである。ほとんどの産業機械の動力源であり、さらに機械の制御と安全装置も電気を利用している。電気への依存度が大きいだけに電気の取り扱いや障害によっては災害になる。電気が人体に流れて起こる感電災害、電気が漏電して火災、制御機器不具合による事故、電気火花が周囲の引火性ガスに着火する爆発災害、電磁ノイズによる電子機器の誤動作、静電気による事故や自然現象である雷による事故、のように電気が直接関係する災害がある。本節では需要家における電気と安全工学の関わりについて述べる。

2 感電

 感電とは、人体を通過する電流により死亡その他の影響を受けることをいう。配線や電気機器において、通常の使用状態で電気が供給(または蓄積)されている部分を電路または充電部という。大地と絶縁されている電路の絶縁が低下して大地に電流が流れる故障を地絡という。災害用語である漏電は一般には地絡故障を指す。
 感電には、直接接触と間接接触がある。直接接触とは充電部の1か所に直接接触して電流が人体を経由して大地へと流れることをいう。間接接触とは電気機器内の絶縁が低下し金属製のケース(外箱・鉄台)、筐体(エンクロージャ)に地絡(漏電)してその対地電圧が上昇し,人体が接触すると金属部の対地電圧や出力インピーダンスに従って人体に電流が流れることをいう。

2.1 人体を流れる電流の危険性

人体は電気的に見ると図4-1のようにインピーダンス(ほとんどが抵抗分と若干の容量分)の概念で示すことが出来る。皮膚の湿り、接触面積、接触圧力、接触時間で変動し非線形である。Zはインピーダンスを表す。
 


電流(商用周波)が皮膚に接触すると50%の人は、0.5mAで皮膚に感じ、5mAでかなりの痛感、10mAで耐えられないほどの痛み、30mAでは筋肉が痙攣し、50mAでは自力で電気回路から離脱出来なくなるほど相当危険になり、100mA超では心臓細動になって致命的結果となる。なお直流電流では交流電流の2倍から4倍の直流電流で同じ刺激効果がおきる(IEC60479-1、-2、/ JIS TR C-0023:2002)。なお比較的軽度の感電であっても二次災害(溺死、墜落)を招ねく事もあるので注意が必要である。図4-2に人体に流れる電流Isと通電継続時間tによる人体への影響を示す。
 



2.2 接触電圧と危険電圧

電撃時に人体の両端にかかる電圧を接触電圧という。現場では測定の容易さから電圧表記が好まれる。接触面積が小さく皮膚乾燥時の片手または片足の抵抗を500Ω(図4-1参照)であるので、片手-両足では750Ωとなり心室細動相当の50mAが流れると接触電位は37.5V(商用周波数)となる。国内法規では人体への危険電流、電圧について規定がないが、労働安全規則(第36条)では、50V以下の充電電路の業務は特別教育を必要とする業務から除外していること、IEC60204-1(JIS B-9960)ではAC25Vrms又はDC60V以下の使用電圧は、特定の条件下であれば感電保護を考慮しなくて良い電圧としていることなどが参考になる。

2.3 感電災害の防止
感電保護の方法には、表4-1に示すような手段がある。
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表4-1   感電保護の方法
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保護の対象保護手段
直接接触保護
・ 意図的および無意識な直接接触に対する保護絶縁
バリア
エンクロージャ
オブスタクル
アームズリーチ外

・ 直接接触に対する追加の保護
漏電遮断器
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間接接触保護
・ 保護導体がある
   ・ 電源の自動遮断過電流遮断器
漏電遮断器
・ 絶縁状態の連続監視
        絶縁監視装置
・ 保護導体がない場合
    自動遮断、絶縁監視によらない保護
        クラスII機器
        電気的分離
        アースフリー用局部的ボンディング
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 直接接触の保護手段には、絶縁(維持管理が必要)、バリヤ(人の接近を阻止する物理的障害物)、エンクロージャ(キュービクル、ラック、筐体)、オブスタクル(充電部に無意識の接触するのを防止するカバーなど)、及びアームズリーチ(図3)がある。

 



間接接触からの保護は、電路と電気機器の絶縁の確保と接地が基本的な手段である。良く使用される保護機器には、過電流遮断器(ブレーカ、フューズなど)と漏電が発生した電路を遮断する漏電遮断器(図4-4)がある。労働安全安全衛生規則第333条に示される感電防止用漏電遮断器は定格感度電流が30mA以下,動作時間が0.1秒以内,すなわち高感度高速形の漏電遮断器である。


4.2.4現場における安全対策
工場内電気設備や建設現場の電気安全は、絶縁管理、接地管理、デマンド管理にくわえて保護具と防具の適正な管理が必要である。このほかアーク溶接機の自動保護設備の使用や移動式発電機を使用する場合には発電機と負荷とのあいだに漏電遮断器をいれることが推奨される。
4.3電気絶縁
電気絶縁は、電流を電路以外の金属製筐体や大地に漏洩させないために電気配線や電気機器に必要不可欠である。また高圧、低圧の活線作業や活線近接作業では作業者を感電災害から守るための保護具(作業者の身体に着用)、防具(露出充電部に装着)も絶縁物である。感電災害の防止対策には、電気絶縁の維持と、接地を適切に接続することが不可欠である。
絶縁物に電圧を印加したとき,電流の流れにくさを表す指標が絶縁抵抗であり,電圧に耐える能力が絶縁耐力である。絶縁物の性能を実用的に試験する方法には
(1) メガー試験 絶縁抵抗値を直読する方法で、500V, 250Vあるいは125Vの直流電圧をかけて高い入力インピーダンスで測定する。電源を掛けない状態での検査方法である。電路毎の絶縁抵抗値は電路の相間電圧150V以下では0.1MΩ以上、150Vを超え300V以下では0.2MΩ以上、300Vを超える場合は0.4MΩ以上の値でなければならない(電気設備技術基準、以下電技という)。
(2) 漏洩電流試験 通電中に行える試験で、漏洩電流が1mA以下であれば上述のメガー試験による抵抗値と同等と規定している(電技)。クランプメータで通電中に計測できるので急速に広まっている。なお、インバータを使用している負荷では実効値型のクランプメータの使用が必要である。
(3) 耐電圧試験(交流,直流,インパルス) 絶縁物に規定の電圧を一定時間印加したとき(例えば1500Vを1分間)、絶縁物が破壊せず耐えうるか否かを調べる試験である。
(4)誘電正接試験  誘電正接試験は,絶縁物に交流電圧を印加したときのtanδ値,tanδ-電圧特性,tanδ-温度特性等から,絶縁物の性状,劣化の程度を調べる方法である。  
4.4接地
接地とは種々の電気設備、装置、機器・電子・通信設備機器を大地と電気的に接続することであり、接地のために地中に埋設した電極が大地との間に生じる電気的抵抗が接地抵抗である。接地抵抗は、地質や電極の深さ・面積で大きく変わり季節による変動もある。接地はその目的によって保安用と称される系統接地、機器接地、静電気防止用接地、避雷用接地と、機能用と称されるノイズ対策用接地、電位基準化用接地等の弱電用接地に大別される。保安用接地は感電防止,漏電火災防止等の安全の確保のための接地である。
図4-5に示すように高圧電路と低圧電路の境界には変圧器(トランス)が入っており,低圧(2次)側の中性線が接地されている。この方式を系統接地といい、変圧器の高圧巻線と低圧巻線間の混触事故が発生した場合に、低圧側の異常電位を抑制するための接地でB種接地工事をおこなう。図4-6に示すように電気機器の鉄台や外箱も接地し、これを機器接地という。電気機器の絶縁が何らかの原因で低下すると、内部の充電部分から外部の露出非充電金属部分に電気が漏れる。これを地絡つまり漏電といい、このような露出非充電金属部分に触れると感電する恐れがあるので機器接地によって露出非充電部分に過大な対地電圧が発生するのを抑制しようというわけである。電技では、電路に施設する機械器具の鉄台及び金属製外箱には機械器具の区分に応じて,A種(10オーム)、C種(10オーム)、D種(100オーム)の接地工事を施すことと定めている.
接地を必要とする設備・機器類が多くなかった頃は接地工事を必要とする設備や機器にそれぞれ独立した接地工事を行っていたが、接地工事の種類と数が増えた最近では国際規格が定めJIS化された等電位ボンディング方式が急速に普及しつつある。等電位ボンディングは従来の日本でも接地に落とすという表現ですすめていた共用接地に近い考え方であり、国際規格でいう等電位ボンディングが今後普及してゆくと考える。


****図4-5  

図4-6****



図4-7 等電位ボンディング

4.5 静電気による災害・障害の防止
静電気が原因となって発生する災害・障害は、電子デバイスの破壊・誤動作、原材料のコンタミネーション、搬送部分の詰まり等の生産障害のほか、可燃性物質の爆発・火災のような大きな災害に至るまで多種多様である。
静電気は固体の摩擦,液体の流動,粉体の破壊等,物体の相対運動に伴って発生する。静電気の引き起こす力学的な吸引・反発力は小さいし、引き起こされる電気エネルギーの放出は数mJと小さいが、可燃性ガス・蒸気,あるいは微粉体には十分な最小着火エネルギーである(最小着火エネルギーの例: 水素 0.019mJ、メタノール0.14mJ、ブタン0.25mJ、メタン0.28mj)。また静電気放電に伴って尖頭値が数A程度の放電電流が瞬時にながれるので人体に電撃を受ける。静電気放電による電撃は、2kVではかすかな放電音と指先に感じるが程度、4kVで放電の発光があり指が痛み、7kVで指、手のひらに強い痛みとしびれを感じる。導電物である人体では合成繊維の衣服で絶縁(ゴム底)の靴を履いていると帯電電位が3~5kV、乾燥している冬季には数十kVになることもある。静電気の抑制に失敗すると大きな帯電になり、災害・障害を誘発する。静電気の発生自体は自然現象であるので完全に避けることができないが、静電気の発生抑制と帯電防止等の適切な対策が必要である。
4.5.1 静電気による爆発・火災
 静電気を原因とする爆発・火災(以下、静電気災害と言う)は、静電気の放電を着火源とする可燃性物質の燃焼にともなう災害である。静電気災害の発生件数は毎年ほぼ100件前後である。そのうち石油類、可燃性溶剤等、可燃性液体の爆発事故は、被害の大きさと人身事故の可能性から非常に危険である。静電気放電には、コロナ放電、ブラシ放電、火花放電、沿面放電、コーン放電、雷状放電に分類される。
4.5.2 静電破壊
 産業界では、接触帯電(2つの物質が接触したとき)、摩擦帯電(物質同士をすり合わせたとき)、はく離帯電(接触したモノをはがしたとき)、衝突帯電(物質と物質がぶつかったとき)のように静電気が発生する状況は多い。静電気により搬送システムが不具合を起こす、半導体が破壊など多くの事例がある。管理基準としてMOS型ICでは80V、CMOS型ICでは200Vと厳しく管理している製品もある。
4.5.3 帯電防止策
 静電気は物質の流動あるいは摩擦等で発生し、絶縁された導体や絶縁物が帯電するので絶縁物の帯電は避けられない。絶縁物の帯電電位が5~10kV以上となる場合は原材料等の帯電防止等が必要である。
(1) 絶縁物の帯電防止には、静電気の発生防止をできる限り抑制する必要がある。その手段は、1)設備と物質、あるいは物質相互の接触(面積・圧力)の減少、 2)接触回数の減少、3)接触・分離速度の低下、4)急速はく離の防止、5)表面状態の清浄・円滑化、6)不純物等異物の混入防止、7)発生の少ない材料の選定等である。
(2)接地導電部の接地は最初に実施すべき対策である。導体は漏洩抵抗が106Ω以下であれば帯電しない。実務的には接地抵抗の値は1000Ωを目途とすれば良い。絶縁物の接地は難しいので、接地された導電部に接触させて絶縁物に帯電した電荷を移動させない(固定)方法や、静電気の起きやすい輸送パイプを接地線で巻くなどの方法を取る。移動するタンクや運搬車など、移動させて使用する運搬具も積み卸し作業の開始前にアースチャックで接地線を取り付ける。材料を容器等に接した状態で帯電物体を静置すると、導電により帯電した電荷が少なくなる(緩和するという)。帯電量は指数関数的に減衰するので緩和時間が一つの目安である。緩和時間は、帯電量が初期値から36.7%に減衰するまでの時間をいう。

(3)多湿化  湿度が低い場合は,物体表面からの水分の蒸発が促進され,表面抵抗率が増加して帯電性が上昇する。木綿、羊毛、紙、木材等天然性素材のものは吸湿性が高く、多湿化による帯電防止効果が大きいが、合成繊維、プラスチックスであっても多湿化による帯電防止効果があるものが多い。多湿化は、狭い室内とか局所的な帯電防止に有効であり、具体的な方法としては、水蒸気の噴霧、加湿機、床への散水等がある.
(4) 作業者の帯電防止 人体は導電物であり絶縁されていれば帯電した着衣や靴から静電誘導を受け、または電荷が移動して人体が帯電する。人体の静電容量は100pF程度なので帯電電位を火花が放電しないように数百V以下にするためには着衣、靴を含めた漏洩抵抗を108Ωとすれば良い。水素ガス等(最小着火エネルギーが0.1mJ以下)が漏洩するような爆発危険場所や半導体を取り扱う作業では漏洩抵抗を107Ωとすれば良い。そのためには作業上の床を導電性にし(塗工を含む)、帯電防止靴と帯電防止服を身につける。
(5) 除電器と帯電防止剤除電器には、空気イオンの生成方式によってコロナ式除電器、電圧印加式除電器、電圧印加式除電器などがある。帯電防止剤には、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤、導電性フィラーなどがある。導電防止性の評価をして帯電防止剤の安全性を確認して使用して欲しい。
4-6 EMC(電磁ノイズによる災害・障害の防止)
すべての機械装置は制御部を有している。制御部のほとんどは電気・電子システムであるので電磁ノイズに関わりがある。ノイズ対策の3原則は
・ノイズを出さない
・ノイズを感じない
・ノイズを通過させない
である。人工的な電磁ノイズによる障害とそれに対する耐性を一般的にEMC(Electromagnetic compatibility)と呼ぶ。電磁ノイズの結合と災害・障害は. 静電結合と電磁結合により引き起こされるので、電磁ノイズの出さないための抑制策と誤動作させないための抑制がある。試験方法と関連する主要規格には規格
a. 静電気(IEC61000-4-2)
b. 放射電磁界(IEC61000-4-3)
c. 電磁的ファースト/バースト(EFT/B)(IEC61000-4-4)
d. サージ(IEC610004-5)
e. 高周波伝導ノイズ(IEC61000-4-6)
がある。
4.7 雷サージによる災害・障害の防止
4.7.1雷サージ電流
雷サージには直撃雷及び雷現象に伴って発生する誘導雷がある。図5.1に示すように直撃雷(図中①)は地上に存在する物体に落雷し非常に大きな雷サージ電流(数百~数万アンペア)により局所的な大地の電位上昇を伴う。建築物の避雷設備は直撃雷を受けて電流を大地に流入させる役割を持つ。誘導雷(図中②)は落雷による大電流放電に伴い,周囲の架空線に対して電磁誘導により起電力を生じさせ、あるいは雲間放電(図中③)は相反する電荷による静電誘導及び雷雲間での放電によって、電荷の急速な移動を生じさせ、これらがサージとして架空線を伝搬して建築物内の機器類に過電圧による損害を与える。電気電子機器類の損害の大部分は誘導雷によるものである。このほか雷サージではないが電源の開閉(図中④)によって発生するスイッチングサージもある.



4.7.2雷防護システム
雷保護方策は外部雷防護(直撃雷から建築物を守る)と内部雷防護(雷サージ等から設備機器を防護)に大別される。
外部雷防護システムは雷電流を直接受ける受雷システム、大地に放流する接地システム、その二つを接続する引き下げ導体から構成される。従来は避雷針(誘導針)の保護角法(傘の下は雷被害から保護される考え)であったが高層建築の普及と電子情報通信機器への被害拡大から2003年にJIS A 4201建築物等の雷保護が全面改定された。大きな変更箇所は、
受雷システムの配置は、a)保護角法、b)回転球体法、c)メッシュ法 によること
接地システムは、抵抗値より接地システムの形状及び寸法を重視している(接地抵抗の値の規定は無い)ことと、構造体(コックリート内の相互接続した鉄筋など)を利用した統合単一接地システムを推奨し、導電位ボンディングの考えを取り入れたことである。この考え方はIECなどの国際規格と一致している。

(引用 JIS A 4201:2003)

内部雷保護システムは、電力線や通信線を経由すると雷サージから人と機器類防護するもので、基本は接地を含めた等電位ボンディングと雷サージ防護装置の適用である。絶縁トランスやフォトカブラ等を用いる対策もある。
4.7.3内部雷保護システム
最も基本的な技術の等電位ボンディングと雷サージ防護装置について述べる.
a)等電位ボンディング
ボンディングは金属導体の"つなぎ"でありボンディングした導体を接地する。雷サージ保護は、電位差を最小化するための低インピーダンスの基準である。従来共用接地あるいは同じ接地につなぐといわれていたものをさらに推進し明確にしたものである。建物の鉄骨を利用した等電位ボンディングも施工事例が増加している。ここで留意すべきことは,機器と接地極とを結ぶボンディングのための導体は極力短くする必要があるということである.
b)雷サージ保護装置
マイコン内蔵の電気機器は過電圧耐性が小さいため、雷サージ等から機器を防護するために雷サージ防護装置(Surge Protective Devices)が必要不可欠である。
SPDには半導体型とギャップ型があるが、電材は酸化亜鉛(ZnO)が多方面に使用されている。大きなサージ耐量と優れた制限電圧特性等の特徴を持っており理想的なSPDといえる。動作電圧の低い領域(1V~数十V)ではトンネル効果を利用したツェナ-ダイオードと電子なだれ効果を利用したアンバランシュダイオードがあり主に機器内に設置される.



4.8 防爆電気設備
可燃性ガスや粉じんに着火して起こるガス爆発や粉じん爆発等のおそれのある危険場所に電気機器を設置する場合には、防爆構造の電気機器を使用することが義務付けられている。電気設備が存在しない状況での爆発災害については,着火源として静電気による放電火花が疑われる場合が多い.
防爆電気機器の観点からの可燃性ガス、引火性液体蒸気を分類し、さらに危険物の発生と滞留の観点から危険場所を種場所、1種場所、2種場所に指定して電気設備を選定する。電気機器の防爆構造と防護システムの主なものには耐圧防爆構造、内圧防爆構造、安全増防爆構造、本質安全防爆構造、樹脂充てん防爆構造などがある。それぞれの防爆構造と防護システムにしたがって電気配線の防爆対策(電力用配線、本安回路の配線)がおこなわれる。
4.9 制御装置
器具、機械、装置、プラントには制御機器、制御システムが組み込まれ、機能を発揮させ、また安全を維持している。制御装置で特に安全と関連が深い部分を安全関連部と呼ぶ。安全関連部は、検出端(センサ)、信号変換器、判断部、操作部(アクチュエータ)、駆動部からなる。
 安全工学に基づく制御系の最大の特徴は、システムが正常に動作しているときのみならずシステムが正常状態にないときであっても安全性を確保すべき点にある。この特徴をフォールト・レジスタンス(抵抗性)という。フォールト(障害)が生じたときに機械の本来の機能を発揮できなくなるが、安全側に故障することを意図している。多くの場合、障害が発生すると機械を安全側に停止させる。なおフェールセーフの用語は、各国の事情で国際規格では用いられず、非対称誤り特性の用語が使用されている。非対称誤り特性とは、例えば部品では、部品が故障したときあらかじめ分かっているある状態に圧倒的になることをいう。ISO13849-1(JIS B9705)が制御装置の安全関連部の規格である。
 制御装置にどの程度の安全方策を持たせるべきかは、リスクアセスメントをおこなって影響度を調べて決定できる。図**はリスクグラフを使用してリスクレベルの決定と安全方策のカテゴリの選択の方法を示す。



表**は安全方策カテゴリの概要である。

表   制御システムにおける安全性確保の技術的方法と
その欠陥に基づく危険事象の発生モード
保護方策カテゴリ制御システムに対する保護方策危険事象発生モード
B制御機能実現不具合発生時
1高信頼化不具合発生時(確率小)
2チェックによる機能確認チェック間隔間で
3機能確認付き二重系不具合の蓄積で
4連続的機能確認、ダーバーシティ不具合蓄積の配慮不足で

電気安全では、電気装置、電気設備の規格化が推奨されており、具体的な内容はJIS B9960-1:1999 (IEC 60204-1)-機械類の電気装置-を参照願いたい。そこにはエンクロージャの構造、等電位ボンディング(接地)、から保護装置のことなど国際規格として守るべき事項が記述されている。例えばオペレータインターフェースでは、押しボタンの色は、表**のように規定されている。

表 押しボタン形アクチュエータの色と意味(JIS B9960-1:1999より)
色意味説明適用例
赤非常危険な状態又は非常時に作動させる非常停止
非常機能の開始
黄異常異常発生時に作動させる異常状態を抑制するための介入
中断した自動サイクルを再始動するための介入
緑正常始動のために作動させる始動(入り)には白色優先であるが緑も使用して良い
青強制行動を必要とする状態で作動させるリセット機能
白規定しない非常停止以外の一般的開始始動(入り)優先
停止(切り)
灰色始動(入り)
停止(切り)
黒始動(入り)
停止(切り)優先

このJIS規格はエンクロージャの寸法、ダクトの構造、表示灯、スイッチの色、非常停止ボタンの形状、色、取り付け方法、電線の色、等電位ボンディングの方法など大変貴重な考え方を規定しているので是非参考にしていただきたい。
(end)