科学技術と倫理の今日的課題(第5講)三元観にもとづく福島原子力事故の原因究明
掲載誌:安全工学 2020 年 59 巻 2 号 pp. 114-122
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著者:杉本泰治、福田隆文、森山哲
アブストラクト:
安全神話は,原子力安全への国民の信頼をつなぎとめる努力だった.福島原子力事故が起き,国民の信 頼を再構築する道を探ると,本報の新たな観点から見えてくるのは,規制行政のあり方の学問に空白があ ること,合理的なルールの不明が規制の迷走となって,当事者の注意を妨げたこと,その上,技術者の努 力が安全確保のとりで(砦)となるところ,技術者と経営層の関係においてそれが機能せず,津波による 電源喪失により原子炉の制御不能となり事故は起きた.対策の一方は,規制行政に関する学問が,国民の 理解と支援を得て前進すること,他方は,信頼の担い手は,規制側と被規制側の双方であり,経営者と技 術者の間の相反問題の解決手続きの定型の確立とともに,経営者と技術者が「活性化されたモラルの意 識」を共有し,共同のコミットメントがなされるようになるとよい.
キーワード:安全神話,規制行政,国民の信頼,法学の遅れ,技術者の倫理