科学技術と倫理の今日的課題(第4講)科学技術にかかわる安全確保の構図
掲載誌:安全工学 2020 年 59 巻 1 号 pp. 39-48
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著者:杉本泰治、福田隆文、森山哲
アブストラクト:
安全確保には,リスクマネジメントに始まるマネジメントのプロセスがあり,ISO 9001 のQMSが利用される.画一的な規格のQMSに比べ,IAEA提唱の安全文化は,人の心や意識という当事者の主観的要 因,および規制行政のあり方を加える.規制行政は,安全確保の実務の枠組みを決め,その基盤を形づく る重要なものだが,そのあり方のルールが不明のまま,規制行政が行われてきた.本報は,ルールの仮説 を提示して,福島原子力事故の前に起きたことを分析する.QMS規制の迷走などの出来事は,規制行政 のあり方そのものが,安全の基盤を掘り崩す要因となることを教える.一般国民には気づかれていない空 白部分である.事故の直前の時期に,規制当局は,法令制度の問題を認識し,法の領域に目を向けたが, 現実の事態はすでにその思惑を超えていたようだ.
キーワード:IAEA安全文化,QMS,品質マネジメントシステム,品質保証,西洋と日本