科学技術と倫理の今日的課題のまとめ― 福島原子力事故から将来へのメッセージ―
掲載誌:安全工学 2020 年 59 巻 3 号 pp. 184-188
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著者:杉本泰治、福田隆文、佐藤国仁、森山哲
アブストラクト:
福島原子力事故の原因解明に向けて,政府・国会・IAEA の事故調査報告の事実にもとづきつつ,第1 に,科学技術に法と倫理を加えた三元観,第2 に,古来の倫理を再構成した,科学技術に携わる者の行動の倫理,第3 に,組織と個人の関係を可視化した組織モデル,第4 に,安全文化の分析にもとづくモデルから見いだされる,規制行政のあり方の合理的なルール,以上の検討により,事故の全体像と原因が見えてくる.この事故の原因は,規制行政のあり方の学問に空白があり,合理的なルールの不明が規制の迷走となって,当事者の注意を妨げ,その上,技術者の努力が安全確保のとりで(砦)となるところ,技術者と経営層の関係においてそれが機能せず,津波による電源喪失により原子炉の制御不能となり事故は起きた.そこから,将来に向けたメッセージが導かれる.
キーワード:福島原子力事故,科学技術と倫理,規制行政,法学の遅れ,国民の信頼