非常停止とは、設計留意事項
非常停止機能とは
非常停止(機能 emergency stop (function) とは、次のことを目的とした機能をいう。
– 人に対する危険源を叉は機械類若しくは工程中のワーク-の損害を避けるか叉は減少させる。
– 人間の単一の動作によって始動する。
非常停止機器の設計上の注意事項は、(1)配置、(2)非常停止機器の構造、(3)制御、(4)その他の考慮事項に分けて述べる。
(1)配置
① オペレータおよびその他の人(だれでも)が操作できること
② 非常停止機器は明確に識別可能で,明確に視認できること。
③ 非常停止機器に速やかに危険無く接近可能できること。
④ 非常停止機器は、各オペレータの操作位置ごとに及び非常停止を必要とする位置に配置すること。
⑤ 非常停止機器操作は危険がない位置に取り付けること。
(2)構造
① 非常停止機器は容易に働かせるように設計されているもので形状は下記であること。
-きのこ形ボタン
-ワイヤ,ロープ,バー
-ハンドル
-特別な場合として,保護カバーのないフットペダル
② 非常停止機器のアクチュエータは,赤色でなければならない。アクチュエータ背後に取付面(地)があり、実施可能であれば、取付面(地)は黄色であること。
- ワイヤ叉はロープを使用するとき、マーカーフラッグを取り付けると見やすくなる。
③ 非常停止機器は、ポジティブな機械的作用の原理(後述)を適用したものであること。
⑤ 非常停止機器が動作を開始し、非常停止信号を出力したら、その信号はラッチング[機械的か(噛)み合い]によって保持しなければならない。
-非常停止信号を出力することなしに非常停止機器がラッチング可能になってはならない。
-非常停止機器(ラッチングを含めた)が故障した場合,停止信号を出力することがラッチングより優先しなければならない。
⑥ 非常停止信号は非常停止機器がリセットされる(かみ合いがはずされる)まで保持しなければならない。
⑦ 非常停止機器のリセットは,当該の非常停止機器を手動で操作することによってだけ可能でなければならない。
(3)制御
① 非常停止は、停止カテゴリ0又は停止カテゴリ1(後述)のいずれかの機能であること。
② 非常停止機能は、非常停止機器の動作後、別の危険を発生させず、危険な工程は、新たな危険源を生じないように可能な限り迅速に停止させること。
注)これが不可能な場合又はリスクを低減できない場合,非常停止機能の実施が最良の解決策か否か検討するべきである。必要な場合,非常停止制御機能は特定の安全防護物の作動を開始するか,又は開始を許可しなければならない。
③ 非常停止機能は,保護機器叉は他の安全重要機能をもつ機器の有効性を損なってはならない。
④ 非常停止機能は捕捉された人を解放するように設計されたいかなる設備をも損なってはならない。
⑤ 機械のすべての運転モードで他のすべての機能に優先しなければならない。
⑥ 非常停止機器を切り離すことができる(例えば,携帯形教示ペンダント)場合,叉は機械類を部分的に分離できる場合,動作中及び非動作中の制御機器との間の混乱が生じさせぬこと。
⑦作動状態にある非常停止機器すべてが,リセットされるまで再起動が可能であってはならない
⑧非常停止機器のリセットが再起動信号となってはならない。
(4)その他の考慮事項
① 非常停止機能は,安全防護策及び他の安全重要機能の代替手段として採用してはならず,バックアップの方策(例えば,故障の場合)として設計するのがよい。
② 非常停止によって動力源を切り離す場合は、電磁チャック叉は制動機器のような補助的設備が確実に作動すること。
③ “適切な方法で停止”とは,次のようなことを含む。
-最適な減速度の選択
-停止カテゴリの選択(4.1.5参照)
-運転の停止順序の事前決定
これらは機械アクチュエータの動力源を切り離すことを含んでいる。動力源の切り離しの例
-電気モータへの電源切
-機械エネルギー源から動作要素分離
-ラム/スライド-の流体動力源遮断
④ 非常停止のカテゴリの選択は,機械のリスクアセスメントによって決定しなければならない
⑤ ポジティブな機械的作用の原理とは、強制開離機構をもつ電気接点を用いた非常停止機器である。 IEC 60947-5-1 :1990の3.2.2によれば, (接点の)強制開離機構とはスイッチのアクチュエータの規定された動作が弾力性のない部分(例えば,バネによらない。)によって直接的に接点を分離するものである。
関連する国際規格 IEC 60204-1:2005、ISO/IEC 13850