6-1.(意図的に)やってはいけないことをした(違反)
規則や手順書通りに作業すると手間がかかり作業性が良くないから別な方法でやってしまうような違反行為です。
作業についたばかりの初心者はあまりこの(やってはいけないこと)の違反はしませんが、少し作業に慣れ始めたチョイ・ベテランがやっては駄目といわれていることに軽い気持ちで挑戦しそれが何度かうまく行くと違反が定常化するような場合や、新人が入ると先輩風をふかして違反をそそのかすと言うような事例さえあります。
ベテランの起こす違反は、初心者よりむしろ多いのです。これは「意図的」であり、「故意」なので一見悪質のように思えますが、どこが危険箇所かを熟知し、規則やルールを知っているにもかかわらず、作業効率の良い方法を自らの判断でおこなっているのでは無いでしょうか。ベテランの行為を初心者が表面的に真似て労働災害になっていることにまでベテランは考えなければなりません。この違反に対しては、ルールを守る利点、守らなければならない理由を理解させる教育訓練も必要です。
この違反には、組織ぐるみと後から指摘されるようなものもあります。ステンレス製のバケツを使用して臨界事故を起こしたJCO(1999)は、国から認められた作業手順書ではなく日常的に裏マニュアルを使っていましたが、作業者は、臨界事故は起きないと聞かされているだけで臨界事故の原理や怖さの教育は受けていませんでした。その結果、作業の手間をさらに省略できるバケツを技術職員の確認の元で使用して臨界事故になったのです。
また善意や厚意でやったことが事故につながった事例(2005、東武伊勢佐木線、竹の塚駅踏み記事事故)もあります。開かずの踏切で1時間近く待っている通行人がかわいそうだからと電車運行の僅かな隙間を見計らって遮断器をあげたところ事故になった事はまだ記憶に新しい事です。子どもに父親が働いているところを見せようとした電車運転士もいました。免許取り立ての若い人が友人にかっこいいところを見せようとした交通事故と共通点があります。