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安全工学


安全工学

 労働災害にみる欧米と日本の違い

1. 労働災害

 労働災害を減少させるためには、使用している製品、装置、職場に潜在する多くのリスクを見つけ出し対策を講じてリスクを減少させることが重要である。従来型の活動はKY活動、ヒヤリハット、職場巡視などベテランの経験と勘に依存した「経験型管理」であり、ともすると法令違反(法令は最低限の要求水準に過ぎない)や社内ルール違反の指摘が多く応急処置的な対策に留まる傾向がある。換言すれば危険源のリスク低減を行わず、従業員の注意を喚起する教育訓練に依存する場合が多い。
1972年に施行された労働安全衛生法は労働災害の減少に大きな役割を果たしてきたが、我が国の労働災害は昭和36年をピークに減少傾向であるが平成になっては微減にとどまり、また近年になって重大災害(死傷者4人以上)は増加の状況である。これは企業において技術、技能をもった、そして安全衛生管理のベテランが大量に退職していること、労働安全衛生法などの詳細な規則を遵守しておけば良いという従来の方法に限界が見えたためである。

従来の安全推進は、安全にコストを掛けず人の教育訓練に重きを置いてきたと言える。そのため事故の責任が追及され、被害者であるはずの作業者が責任を負わされる事例さえしばしば見分する。
わが国では事故は絶対に起こさせないとか完全な安全を求める場合があるが、人に安全を頼っているからには完全な安全はあり得ない。「機械は壊れる、人は間違える」を受け入れて、どのレベルのリスクまで受容するか、機械が壊れたときにも所与の機能は低下しても安全を確保する(フォールト・トレランス)ために機械はどのように設計するべきか、人が起こす間違い(ヒューマンエラー)を最小限にするように人間工学に基づいた機械の設計とフールプルーフの考え方を取り入れなければならない。右図に示すように安全の視点を切り替えなければならない。

2.安全に関する欧米と日本のちがい

 日本には安全と水はただであるという考えが永く続いている。下表に日本と欧米の安全に関する意識の違いを示した。


 



3 産業災害防止への課題
 今後の産業災害防止への課題として、高齢化問題がある。高齢化時代を迎えて高年齢労働者がその活力を発揮できる事は非常に大切な事である。雇用労働者の1/3が50歳以上であるが、労働災害の総発生件数のうち半数近くが50歳以上であり、その占める割合は年々増加している。加齢に伴う心身機能の低下などから労働災害発生の要因となっていると考えられる。職場の改善を必要とする作業の一部を次に示す。

表2 高年齢労働者のために改善を必要とする作業
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1) 高所作業
2) 転倒の恐れのある作業
3) 重量物取り扱い
4) 急激な動作を必要とする作業
5) 不自由な作業姿勢
6) 低照度で視覚を必要とする作業
7) 複雑な作業
8) 動作の速さと正確さが必要な作業
9) 微細な識別能力が必要な作業
10) 時間に追われる作業

労働災害の半分は、建設業と製造業で占める。労働災害の事故の型をみると建設業では墜落・転落が33%、切れ・こすれが12%、はさまれ・巻き込まれ12%、飛来・落下11%であり、製造業でははさまれ・巻き込まれが32%、転倒が14%、切れ・こすれが13%、墜落・転落10%である。

4 OSHMS
労働安全衛生マネジメントシステム(以後OSHMSと略す)の構築が国内外の企業で活発におこなわれている。これは、ISO9000(品質マネジメントシステム)シリーズ、ISO14000(環境マネジメントシステム)シリーズに続くマネジメントシステムとしてISO、ILOをはじめ政府も注力している。OSHMSはISOでの規格化を見送り、ILOがガイドラインを公表し、労働省(平成11年当時)も指針(告示第58号)を出した。企業がOSHMSを構築して行くのは、現在の安全衛生管理の国際的な大きな流れとなっている。

4.1 OSHMS構築レベル
厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」、ILOの「労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン」は、基本的には企業における安全衛生管理を自主的、継続的に推進し、そのレベルアップを図ることを目的として自社に適合したシステムを構築するための指針である。したがって、OSHMSは基本的には第3者機関に評価・認証してもらう前提ではないが、ISO9000や14000と同様に企業・事業場の安全衛生レベルの評価指標になる。
4.2 構築の留意点
a) 国際化を図っている企業では、対象とする国・地域の基準をも満たすレベルで、第三者の監査にも適合するOSHMSの構築の事例が多い。国内向けの事業を営む企業・事業場であっても、ISO9000、14000の認証を得ていることが、入札あるいは下請業者の選定の基準の一つとして取り入れられつつある状況から、OSHMSの構築も国際化企業と同様の配慮が必要と考えられる。
b) 企業内システムとして構築する場合は、第三者認証を要件としないので、各種の指針などを参考としながら、法令の定める事項の遵守と、その他の要求要素を事業場の実態に合わせて取り込み、段階的なレベルアップが有効である。
c) OSHMSの運用を行いながらレベルが向上させてゆくと災害発生の確率が著しく低下するという性格であることを経営トップは正しく理解し、長期的な視点でその導入を決断することが重要である。
4.3 OSHMSの基本的な仕組み
OSHMSは、国内外で多くのものが公表されているが、その基本的な仕組みはISO9000あるいはISO14000と同様にPlan Do Check Actionのサイクルを繰り返しながら、図3に示すようにスパイラル状に安全衛生水準を高めていくものである。
 
 



4.4 構築のポイント
OSHMSを構築する場合のポイントは、厚生労働省の指針にも示されるように、企業・事業場の安全衛生水準の実質的な向上を自主的に図る目的で推奨しているものであり、形式的な構築や文書化が目的でないことを理解したうえで実態を踏まえて作業を進めることが重要である。
a 文書化
システムの基本的な要求事項は、ほとんどの項目について文書化して、それが周知され、いつでも閲覧できるように保管することである。
b 経営トップの方針の表明
OSHMSでは安全衛生に関する経営トップの方針をトップが表明(文書で、かつ具体的な形で自らの方針を表明すること)し、その周知の状況を確認するとともに、方針に基づいて作成した計画の実施状況を確認することが必要であることから、組織が同一認識のもとに一体となって災害防止に取り組まざるを得なくなるので、理想的な形ができあがるともいえる。
c 危険有害源を同定(リスク・アセスメントシステムを構築する場合に最も重要で、かつ、かなりの知識、労力を要する部分である。職場に潜在する多くの危険有害源である危険有害箇所・作業などを同定し、危険有害度を定めることが必要である。
d パフォーマンス
安全管理・活動の評価としてOSHMSにおいてはパーフォーマンス(performance)の測定という、結果を数値以外の方法で評価することが要求されている。
これは、例えば、次のような事項について達成度の評価を行うものであり、いわば定性的なものを定量化して評価することになるので、その評価の基準を定めるという作業が必要となる。
・方針および目標が達成されているか。
・リスク管理が実施され、それらが有効であるか。
・草陰な事象(事故、ニア.ミス、疾病等)を含むOSHMSの欠陥から教訓を得たか。
・教育訓練、・労働者等への周知、協議プログラムが効果的であるか。
・情報が適切に発信され、有効に利用されているか。
e 監査
国内外のOSHMSにおいては、現在のところ一部の国を除いて第三者による監査は要求されていないが、継続した安全衛生水準の向上を図るうえで監査の意義は重要であり、内部監査であっても、それを担当する者には中立性と監査項目に対応した専門的知識を含む経営全般に関する広範な知識が要求されることになる。
また、監査の結果は、経営トップの方針の変更、実施計画の変更をはじめとして、システムの要求事項のすべての運用、見直しに影響するものであるので、適切な人選と十分な教育訓練が求められる。

参考資料
1)労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針 平成11年4月30日 労働省告示第53号
2)機械の包括的な安全基準に関する指針 平成13年6月1日 基発第501号