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安全工学

安全工学

 技術者の能力開発と職場での教育

技術者の育成は、大きな課題である。技術は急速に幅広く発展してゆくが人の育成は簡単には進まない。職場における技術者教育を討議してみたい。

(1) 企業は人材の育成を重点課題の1つにしているが、企業の中の基本方針(いわゆるしくみ作り)を見ると

1) 人材育成は、それぞれの部門において最も重要かつ緊急な課題として取り組まれているが、その認識と具体的に実施している内容には隔たりがある。
2) キャリアパス、長期的な人材育成計画、が出来ていない、またはあっても実態に即していない。特に経験5年程度の技術者のためのキャリアパスの計画的策定が重要である。
3) キャリアパスを会社が技術者に示すことが出来ていないので、技術者自身が自己啓発の意識付け(動機付け)と目標設定が不十分である。
4) キャリアパスが見えないので、職場におけるOJTが曖昧になっている。

(2) OJTは企業において最も普通に見られる人材育成の一手段であるが、いくつかの問題を抱えている。

1) OJT指導者に与えられるべき目標設定が曖昧である。
2) 指導者に育成しようという意気込みや情熱が希薄である。
3) 指導者自身の教えることの出来る知識を持っていない、あるいは教えるスキルが不足している。多くの場合、指導者自身もきちんと育成されていなくて、指導者が経験的に学んだ極めて狭い(最悪な場合は正しくない)知識しか有していない。
4) 企業は、納期や工程に追われており、指導者もその例外ではなく、OJTに対して物理的(多くの場合はOJTに割ける時間)が極めて不足しており、また精神的余裕も無い。

(3) 自己啓発することが求められているが若手技術者の置かれている状況を見てみよう

1) 技術者は、何を目指して、少なくとも方向性だけは認識して、今なにを、今後は何をすべきなのか、分かっていない。 このことは、自己啓発の目標が見いだせていないので、自己啓発をやらない、あるいは始めてもすぐ止めてしまう。
2) 自分がいま何をしたいのか(現在)、将来どのようになりたいのか(未来)が分かっていないので自己啓発に取りかからない。身近にいる職場の先輩をみても、勉強している気配が無く、与えられた仕事をこなしている内に企業が必要とする技術が身につくなど短絡思考し、日常業務をこなせればそれで良いと思ってしまう。即ち、動機付けされない。
3) 自己啓発する意欲があっても、現実の問題として時間が取れない。要は忙しすぎる。放電が続き過放電にあると充電しなければならないと気づいても、物理的に時間が取れない。特に戦力の中核になっている優秀な技術者には仕事が多いという現実がある。これは企業として切実な問題である。企業をリードして行くべき優秀な技術者を企業が重荷を与え過ぎて潰している。

(4) 次の技術を開発する(先端技術)ためには

1) 企業の中から外に目を向けない。インターネットに出ている情報で満足する傾向がある。
外に目が向いていないので、トップランナーには決してなれない。自分で自分を褒めておしまいである。
2) 研究発表は社内向けに留まっている。学会、大学や外部の団体・組織・研究会などとの交流が不十分である。情報を収集するレベルに留まるので発展がない。発表するのと聴講するのでは一桁のレベルの差がある。外部に発表するすることを奨励する風土の不足がある。
3) 少数であるが、特定分野を深掘りしている技術者がいる。残念ながら視野がせまくいつまで経ってもスペシャリスト指向である。

(5) 技術者に求められていること

1) 以前の技術者は、「いかに(HOW)作るか」が要求されていた。いまの期待は「なに(WHAT)を作るか」である。HowとWhatの違いは大きい。多くの技術者は今もHOWに留まっているのではないか。これを打開するためには、技術者自身が意識を変えること、仕事の仕方を変えること、そして組織が柔軟に対応することが必要である。制度的、組織的問題もある。
2) 改良改善技術者から開発技術者になることが技術者として生き残れる道である。そのためにはマーケッティング能力が必要であり、MOTもこの延長にあると考えている。
3) 管理的技術の習得が必要であり実践する場を自ら求めて進むこと。管理的技術とは、VE手法、プロジェクトマネジメント、リスクマネジメント、デザインレビューのやり方、QC的仕事の進め方などが相当する。技術者はともすればQC,VEの分野を敬遠しがちである。ものを作るという企業ではおろそかになってはならない。

(6) 全般的な事柄

1) 教育は片手間では出来ない。OJTに頼ることはもはや無理である。選任者、組織が必要である。社内兼任講師の負荷が高くなり共倒れとなる。
2) 教育でも外部に委託する分野を増やすこと。
3) 企業のコアとなる部分だけ自社内で教育する覚悟を持つこと。

以上